2023/10/10 働き方改革-半年後に迫る中で・5/建設産業全体の本気度試される
【建設工業新聞 10月 10日 1面記事掲載】
◇適正工期の原則提示徹底を
時間外労働の罰則付き上限規制に備え、建設業界は4週8休の取得を柱とする働き方改革を進めてきた。平日の残業に加え、通常日曜日を除く法定外休日出勤もカウントされる時間外労働の削減には、休日を増やすことが最も有効との考えからだ。
現場で働く人たちの休日確保には、適正工期の設定と発注者の理解が欠かせない。上限規制の適用まで半年余となった今夏以降、建設業界ではより踏み込んだ対策が相次いだ。
日本建設業連合会(日建連)は7月、民間建築工事の発注者に4週8閉所、週40時間稼働の工期を原則提示していく「適正工期確保宣言」を決定した。宮本洋一会長は「会員企業が元請の立場で足並みをそろえるのは画期的だ」と強調し、施工者側が考える適正工期を確保しつつ競争していくことの意義を訴える。
事業の収益性を重視する民間発注者にとって、投資効果を早期に享受できる短工期の提案は、請負価格と同様に、受注者の選定を左右する大きな要素だ。そのため、過度な短工期化を助長する「工期ダンピング」の問題も指摘される。
今回の宣言は著しく短い工期に対する受注者側の危機意識の表れともいえる。日建連の調査によると、会員企業の2022年度上限規制達成状況は原則(月45時間、年360時間)で約4割、特別条項(例外的に月100時間未満、複数月平均80時間、年720時間)でも約8割にとどまる。法令順守は道半ばの状況だ。
蓮輪賢治副会長建築本部長は「民間建築の手持ち工事量が多い中、業界を挙げて『真に適切な工期を提案する』という具体的なアクションを喫緊に起こさないといけない」と話す。9月には宣言に関する日建連共通の発注者向けパンフレットを作成。会員企業にはスピード感を持ちつつ、発注者に対して丁寧な説明と分かりやすい提案に努めるよう呼び掛けていく。
全国建設業協会(全建)は「適正工期見積り運動」を9月に始めた。工期の見積もりや提案を求められた官民発注の全工事を対象に、国の中央建設業審議会(中建審)が20年7月に作成・実施勧告した「工期に関する基準」に基づく工期の提示を進める。奥村太加典会長は「上限規制を順守する重要な取り組みになる」と位置付け、適正工期の確保を訴える。
一方、工期に関する基準について実効性を問う声もある。中建審基準には上限規制順守のために達成すべき数値目標は盛り込まれておらず、実際の契約手続きの中でどれだけ実効性を担保できるかは不透明だ。こうした指摘を踏まえ、基準の在り方を再検討する動きも出てきている。
両団体の新たな取り組みは、建設現場で工期のしわ寄せを受けやすい設備工事業も含め、業界全体の働き方改革を後押しするものと期待される。建設業の働き方改革は、上限規制の適用が始まる24年度で終わりではない。さまざまな施策をどう継続し成果に結び付けていくのか。産業全体の本気度が試されている。
現場で働く人たちの休日確保には、適正工期の設定と発注者の理解が欠かせない。上限規制の適用まで半年余となった今夏以降、建設業界ではより踏み込んだ対策が相次いだ。
日本建設業連合会(日建連)は7月、民間建築工事の発注者に4週8閉所、週40時間稼働の工期を原則提示していく「適正工期確保宣言」を決定した。宮本洋一会長は「会員企業が元請の立場で足並みをそろえるのは画期的だ」と強調し、施工者側が考える適正工期を確保しつつ競争していくことの意義を訴える。
事業の収益性を重視する民間発注者にとって、投資効果を早期に享受できる短工期の提案は、請負価格と同様に、受注者の選定を左右する大きな要素だ。そのため、過度な短工期化を助長する「工期ダンピング」の問題も指摘される。
今回の宣言は著しく短い工期に対する受注者側の危機意識の表れともいえる。日建連の調査によると、会員企業の2022年度上限規制達成状況は原則(月45時間、年360時間)で約4割、特別条項(例外的に月100時間未満、複数月平均80時間、年720時間)でも約8割にとどまる。法令順守は道半ばの状況だ。
蓮輪賢治副会長建築本部長は「民間建築の手持ち工事量が多い中、業界を挙げて『真に適切な工期を提案する』という具体的なアクションを喫緊に起こさないといけない」と話す。9月には宣言に関する日建連共通の発注者向けパンフレットを作成。会員企業にはスピード感を持ちつつ、発注者に対して丁寧な説明と分かりやすい提案に努めるよう呼び掛けていく。
全国建設業協会(全建)は「適正工期見積り運動」を9月に始めた。工期の見積もりや提案を求められた官民発注の全工事を対象に、国の中央建設業審議会(中建審)が20年7月に作成・実施勧告した「工期に関する基準」に基づく工期の提示を進める。奥村太加典会長は「上限規制を順守する重要な取り組みになる」と位置付け、適正工期の確保を訴える。
一方、工期に関する基準について実効性を問う声もある。中建審基準には上限規制順守のために達成すべき数値目標は盛り込まれておらず、実際の契約手続きの中でどれだけ実効性を担保できるかは不透明だ。こうした指摘を踏まえ、基準の在り方を再検討する動きも出てきている。
両団体の新たな取り組みは、建設現場で工期のしわ寄せを受けやすい設備工事業も含め、業界全体の働き方改革を後押しするものと期待される。建設業の働き方改革は、上限規制の適用が始まる24年度で終わりではない。さまざまな施策をどう継続し成果に結び付けていくのか。産業全体の本気度が試されている。
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