2023/10/06 働き方改革-半年後に迫る中で・4/高齢技能者の大量離職も間近に

【建設工業新聞  10月 6日 1面記事掲載】

◇受発注者がより一体で対応を

労働時間の管理が来年4月から非常に厳しくなり、国直轄以外の工事で法令通りにやっていたら完成が間に合わなくなる--。

ある専門工事業団体の幹部は先月開いた会合で、時間外労働の罰則付き上限規制への対応について危機感をあらわにした。国土交通省とそれ以外の官民発注者の間で「かなりの温度差がある」とし、規制適用が猶予されてきた期間中に「現場の実態を踏まえた抜本的な改革が進められてこなかった」と語気を強める。

建設産業専門団体連合会(建専連、岩田正吾会長)が6~7月に行った各地方整備局らとの意見交換では、技能者の賃金アップと合わせ、現場での完全週休2日制導入や時間外労働の上限規制への対応を議論の柱に据えた。建専連側は作業時間の短縮を考慮した適正な工期設定、元請主導による週休2日実施を要請。車両系建機の置き場~現場間の移動時間など、日常的に時間外労働が伴うクレーンやコンクリート圧送といった業種の窮状も訴えた。

整備局側は週休2日モデル工事をはじめ、夏場の猛暑を考慮した工期設定、朝礼・後片付けを業務時間に含むと定義付けた上での実態調査、会社~現場間の往復移動時間を考慮した積算方法の検討など、技能者の働き方改革を後押しする取り組みを説明した。

一方、地方自治体や民間事業者が発注する工事では、適正な工期設定など働き方改革への対応が不十分との意見が相次いだ。各整備局からは労働基準監督署と協働し、工期や労働時間に主眼を置いた民間工事のモニタリング調査、自治体への個別ヒアリング・指導を進める考えが示された。

上限規制への対応に当たり、歩掛かりの見直しを求める声も少なくない。日本トンネル専門工事業協会の野崎正和会長は「簡単に言うと、現行は8時間労働で10時間分の出来高、進行になっている」とし、このため計画で4週8休だったのが工程にズレが生じると4週6~5休で作業しなければ間に合わなくなる実情を明かす。現場の実態を正しく把握した上で、適正な歩掛かりに基づき工期や積算基準を見直す必要性を強調。元請団体の関係者らと意見交換しながら、国交省に歩掛かり見直しの働き掛けを強める考えだ。

鉄筋工事業団体の会合では「一人工の歩掛かりを請負額から逆算すると、国の設計労務単価に比べ2割程度低い」「4週8休になると働ける日数が10%以上減る」「段取りが悪いと職人が遊ぶことになり、職人の働き方改革は現場監督の経験や技量にも左右される」との声も聞こえてくる。

技能者の世界では、団塊の世代が75歳を超え大量離職が加速するとされる「2025年問題」もささやかれる。躯体系の工事業団体幹部は「ゼネコンの所長が先々の労務不足を心配している。これから腕利きの職人を現場に常駐させるとかなり高い単価になる」と話す。労務不足への懸念が高まる中、元下請を含め受発注者がより一体となった対応が求められている。

日刊建設工業新聞の購読申し込みは、こちら

戻る