2023/10/05 中建審/工期基準の見直し検討へ、より実効性持たせた仕組みに

【建設工業新聞  10月 4日 1面記事掲載】

国土交通省が3日に開いた中央建設業審議会(中建審、大久保哲夫会長)の総会で、同審議会が2020年7月に作成・実施勧告した「工期に関する基準」の記載内容をより実効性を持たせた形で見直すべきとの意見があった。時間外労働の罰則付き上限規制の適用が半年後に迫る中、適正工期の確保に課題が多いとの現状認識が大勢を占める。現行基準が理念的な規定にとどまっているとの一部委員の指摘に対し、事務局の国交省が基準改定を前向きに検討する考えを示した。

会合で堀田昌英東京大学大学院工学研究科教授が基準改定を提案した。公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)に基づき対応が進む公共工事だけでなく、民間工事でも多くの発注者が「サステナブル調達基準」などの認識が高まっていることに言及しながら「(現状の)理念規定を超えた具体的、実効的な仕組みを検討する必要があるのではないか」と訴えた。

国交省は建設業行政の動向として働き方改革の現状を報告する中で、直近の実態調査のデータを示す形で工期不足に起因し時間外労働が発生するケースが多いと指摘。特に民間工事では工期設定で受注者の要望が受け入れられないことが多い反面、受発注者で協議した場合は妥当な工期になる割合が高まると説明した。

現行基準では工期全般で考慮すべき事項を示しているが、時間外労働規制に関する記載内容は「考慮する必要がある」との表現にとどまる。発注者の果たすべき責務は、時間外労働規制の適用への環境整備に「協力する」との記載がある。

堀田氏の提案に、国交省の岩下泰善不動産・建設経済局建設業課長は「実効性ある書き方ができるかどうか検討する」と答えた。

これに関連し奥村太加典全国建設業協会会長は、現行基準では「猛暑日による不稼働に触れていない」と指摘し、こうした観点を新たに加えるよう要望。西野佐弥香京都大学大学院工学研究科准教授は「(適正工期の必要性が)消費者レベルで周知されていない。今までと同じコスト、工期では工事できないと広く社会的な合意として周知することが大事だ」と話した。

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