2023/09/27 「地域の守り手」不在市区町村が拡大、安定した事業量・適切な受注環境必要/全建調査

【建設工業新聞  9月 27日 1面記事掲載】

今年も各地でインフラや建物などに大きな被害をもたらす自然災害が相次ぎ発生する中、「地域の守り手」として災害対応に当たる地域建設会社の不在地域が拡大している。全国建設業協会(全建、奥村太加典会長)の調査結果によると、都道府県建設業協会の会員企業が存在しない市区町村は7月時点で233団体となり、昨年8月時点に比べ4団体増加。地域を守り続けるには建設会社の存続が欠かせない。そのためにも安定した事業量の確保などを求める声が多く寄せられている。

調査は改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)運用指針に基づく受発注者双方の対応状況を定期的に把握するため、2015年度から毎年度行っている。本年度は6~7月に47都道府県建設業協会と会員企業2524社(前年度比1183社増)にそれぞれ実施した。

47都道府県建設業協会に実施した調査では、都道府県ベースで会員企業不在の市区町村があるかないか確認した。7月時点で▽岩手▽石川▽富山▽福井▽岐阜▽三重▽奈良▽和歌山▽岡山▽山口▽愛媛▽高知▽大分▽佐賀▽宮崎-の15県を除く32都道府県で会員企業不在の市区町村があることが分かった。

全建は32都道府県のうち東京や名古屋、大阪、福岡など大都市圏は会員企業の総数が多く、当面は災害対応に大きな支障はないと分析する。一方、それ以外の地域については将来的な災害対応の体制に不安を示す。

会員企業向けの設問では、今後も持続していくために課題として考えていることを調査。その結果、複数回答で多い方から「新規入職者を含む担い手の確保・定着」90・1%、「事業量の確保」77・3%などの順に続いている。

災害対応などに充てる人員や機材などを維持するため必要な受注量が確保できているか聞いたところ、「確保できている」が52・8%だったのに対し、「不足している」は30・7%。過去3年で「人員や機材を手放したり業務規模を縮小したり」したことがあるのは16・5%だった。このうち人員や機材を手放した・縮小した要因は、定年や老朽化など「自然減」が69・5%に上る。

過去3年で災害復旧工事を受注した経験がある会員企業は50・7%と過半を占めた。全建は引き続き公共発注機関に対し地域建設業の存続に配慮した課題解決を求めていく。

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