2023/09/07 国交省/直轄工事で単品スライド適用急増、22年度は前年度の10倍に

【建設工業新聞  9月 7日 1面記事掲載】

国土交通省の直轄工事で、物価変動分を工期末に精算変更する「単品スライド」条項の適用が急増している。同省の調査によると、港湾空港関係を含む土木全般や営繕など地方整備局締結契約(北海道開発局含む、内閣府沖縄総合事務局関係除く)で2022年度(速報)に274件の工事に適用した。▽全体▽単品▽インフレ-の3種類のスライド条項という現行の枠組みができた14年度以降、最多を更新。資材高騰が顕在化し始めた21年度(28件)と比べても約10倍の大幅な伸びとなる。

3種類のスライド条項のうち14年に最も新しいインフレスライドの全国適用が始まった。以降、単品スライドは適用件数が多かった年でも2桁程度で推移してきた。21年1月ごろから急激に高騰した資材価格は現在も高止まりしている。そのため、22年度末までに工期末を迎える工事で単品スライドの適用請求が増えたようだ。

全体スライドとインフレスライドは基本として請求日以降の残工事の資材や労務単価などを見直す仕組み。これに対し、単品スライドは部分払いを行った出来高部分を除く工期内すべての鋼材類や燃料油類といった特定資材を対象に、急激な物価変動を考慮し工期末に請負代金額の変更契約を行う。既に物価変動の影響を受けている工事であっても工期末を迎えた時点で適用となる。

物価高騰の背景はサプライチェーン(供給網)の混乱を招いた世界的なコロナ禍の影響とともに、ロシアのウクライナ侵攻が拍車をかけた形になる。そのため建設分野でも原燃料や資材の調達が難しくなり、歴史的な高騰や品不足をもたらし今も続いている。

国交省はこうした事態に対応し、22年6月に単品スライドの運用ルールを改定。実際の購入価格を用いてスライド額を算定できる新たな規定を加えた。通常の算定で参考とする物価資料に高騰分が反映されるまでのタイムラグを極力なくした。

同省官房技術調査課によると、こうした対策が単品スライド条項の適用急増につながったと分析している。

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