2023/06/30 中建審・社整審基本問題小委/「標準労務費」の考え方提示、実効性確保などで意見

【建設工業新聞  6月 30日 1面記事掲載】

中央建設業審議会(中建審)・社会資本整備審議会(社整審)合同の基本問題小委員会の会合が29日に東京都内で開かれ、国土交通省が受注者による廉売行為を制限する際の基準となる「標準労務費」の考え方の検討状況を明らかにした。公共工事設計労務単価相当の賃金の支払いを目指す観点から、標準労務費の水準は「設計労務単価×歩掛かり」相当と想定する。委員からは現場特性や既存の商慣習への配慮、違反行為への対処の実効性確保などで意見があった。=2面に関連記事

標準労務費はトンや平方メートルといった単位施工量当たりの標準的な労務費と位置付け、中建審が勧告する。工種ごとに一つの標準労務費を東京の標準的な仕様・条件で設定し、それ以外の地域や仕様、条件は補正で対応する。具体的には直轄工事の積算に使用する単価を基準とする。ただ材工分離が前提となるため、工種で個別に対応が必要な場合がある。標準労務費を一定程度下回った取引には許可行政庁が注意や勧告を行う。

最終的な賃金の支払いまで担保するため、建設工事標準下請契約約款(下請約款)で「表明保証」の考え方を導入。受注側(下請)の発注側(元請)に対する▽適正な賃金支払いのコミットメント(支払いを約束する条項を規定)▽賃金開示への合意に関する条項(発注側の求めに応じ賃金台帳を開示)-の2項目を追記する。

荒木雷太岡山県建設業協会会長は、現場の実情として「国の標準歩掛かりと合わない工事が結構ある。歩掛かりに変数を置く形にしないと労務費に影響する」と指摘。弁護士の大森文彦東洋大学名誉教授は「材工一式が分解されると下請のありように影響を与える」、青木富三雄住宅生産団体連合会環境部長兼建設安全部長も「材工で慣れていると分離を嫌がる。頑張りによる差がなくなりモチベーションが低下しないか」と懸念を伝えた。

岩田正吾建設産業専門団体連合会会長は「(元請から)お金が流れてくるのであれば(下請として)賃金台帳を出すと団体内でコンセンサスを取れている」と強調。小倉範之全建総連書記次長は表明保証を契約行為と明確化し、賃金の支払い状況の定期調査を制度化するよう提案した。金井甲日本建設業連合会常務理事は「元請の立場では下請に支払う原資が必要。公共工事に限らず、すべての工事で行き渡りを確保する制度設計をお願いする」と話した。

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