2023/03/29 国交省持続可能検討会が最終会合/議論の場は中建審へ、
キーワードはパートナーシップ

【建設工業新聞  3月 29日 1面記事掲載】

◇長橋和久不動産・建設経済局長が検討過程で言及

国土交通省の有識者会議「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」が29日、議論の成果を取りまとめる最後の会合を迎える。ほぼすべての会合に出席し議論を見守ってきた国交省の長橋和久不動産・建設経済局長は「キーワードはパートナーシップ」と検討過程を受け止める。資材価格変動への対応や技能労働者の処遇改善といった根深い課題にさまざまな処方箋が示されているが、実現には発注者・受注者、元請・下請など幅広い関係者の理解が欠かせない。今後、中央建設業審議会(中建審)に議論の場を移し、制度上の対応方法など運用面を詰めていく見通しだ。

長橋局長が最終会合前に日刊建設工業新聞のインタビューに応じた=写真。政府全体で推進する「賃上げ」機運の高まりやロシアのウクライナ侵攻後の資材価格高騰を背景に、賃上げを阻害する労務費へのしわ寄せを防ぎ、適切な価格転嫁を実現する必要性を強調。将来的に建設市場の急成長が見込めない中、業界構造の抜本的なてこ入れを訴える。

持続可能な産業の姿として「若い人にとって魅力があり、新陳代謝が機能すること」と語り、深刻化する担い手不足を最大の課題に挙げる。検討会では国交省がたたき台の政策案を用意するのではなく、むしろ有識者らの提案を積極的に取り入れた。「若い人に選ばれる産業でないといけない」という思いから「新しい視点を持つ比較的若い世代の先生方、それも幅広い専門分野や他業種の方も含めてざっくばらんに意見をもらった」と狙いを話す。

これまでの議論を踏まえ「建設産業の生産過程に関わる取引の当事者らがパートナーシップによって適切に価格転嫁できる、適正な競争環境をつくる」と目指す方向を見据える。受発注者が互いを理解し対等な立場となれるよう、請負契約の透明性を高める仕組みなどが提示されている。他産業に劣らない賃金水準を確保し、週休2日など働き方の改善を実現するためにも、労務費や工期のダンピングを防ぐ方策も重要視する。

パートナーシップを構築することで「現場で働く技能者のスキルや経験がしっかり評価される労働市場をつくっていく」と話し、「それが建設キャリアアップシステム(CCUS)の目指すところ。ちゃんと機能させていく」と意気込みを語った。

検討会は業界外の視点を重視した意見交換だったため、中建審で業界関係者も交えた議論が本格スタートする。現時点で法制度にどう落とし込まれるかは白紙だが、検討会でまとまった論点を漏れなく提示し対応を検討していく方針だ。

長橋局長は各施策の具体化の方向性として、例えば労務費の圧縮を伴う廉売行為の制限に当たって「不適正な請負価格を判断する尺度がいる」と指摘する。受発注者間の価格転嫁に向け、想定外のリスクをどう見積もり、負担していくかのルール設定なども課題となる。さまざまな利害関係者が集まる中建審の場で、どのような着地点を見いだせるかが焦点となりそうだ。

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