2023/01/27 下請の価格転嫁、半数は要請・交渉せず/国交省・中企庁・公取委の3調査で共通傾向

【建設工業新聞  1月 27日 1面記事掲載】

建設資材の価格高騰が深刻化してから、建設業で価格転嫁がどの程度行われたか--。国土交通省と中小企業庁、公正取引委員会がそれぞれ実施した調査から、その実態が明らかになってきた。各調査の結果を見比べると、主に下請の立場でコスト上昇分の取引価格への転嫁を要請したり、価格変更を交渉したりした割合は50%台で共通する。コスト上昇分を自社で抱え込んだり、取引関係の悪化を恐れ元請への協議の申し入れに至らなかったりするケースも散見される。=2面に関連記事

国交省と中企庁の「2022年度下請取引等実態調査(元下調査)」、中企庁の「価格交渉促進月間(22年9月)フォローアップ調査」、公取委の「独占禁止法上の『優越的地位の乱用』に関する緊急調査」の結果から、同じような設問を抽出し回答状況を比較した。

元下調査によると、元請と請負金額の変更交渉を行ったことがある下請は52・4%。建設会社と取引関係にあるメーカーなどの回答も含まれる中企庁のフォローアップ調査に目を移すと、元請や発注側の建設会社に協議を申し入れたのは58・9%。公取委の緊急調査は「総合工事業」を対象とした設問で、コスト上昇を理由とした取引価格の引き上げを受注者の立場で要請した割合が53・5%だった。

各調査では下請が価格変更交渉を申し入れても、協議が拒否されたり、そもそも申し入れをためらったりするケースが実際に確認された。中企庁のフォローアップ調査では「協議を申し入れたが話し合いに応じてもらえなかった」が5・9%。コスト上昇にもかかわらず協議を申し入れなかった理由として「自社で吸収可能と判断した」(17・1%)、「発注量の減少や取引中止を恐れた」(6・1%)が挙がった。

公取委の緊急調査で、総合工事業者のうち取引価格の引き上げを発注者の立場で要請されたのは87・1%。受注者の立場で要請した割合とは隔たりがあり、取引価格の引き上げを下請やメーカーから要請されても、発注側の元請やデベロッパーなど民間発注者に要請できていない実態が浮かび上がる。公取委は下請などからの要請の有無に関係なく、コスト上昇分の反映について価格交渉の場で協議せず取引価格を据え置く行為は、優越的地位の乱用として問題につながる恐れがあると指摘している。

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