2021/10/19 国交省/「復興JV」全国適用へ/大規模災害に迅速対応、21年末にも準則改正案提示

【建設工業新聞  10月 19日 1面記事掲載】

国土交通省は気候変動の影響で大規模災害が多発する状況を踏まえ、東日本大震災の被災地に限定し運用していた「復旧・復興建設工事共同企業体(復興JV)」制度を「共同企業体運用準則(JV準則)」に位置付ける検討に入った。JV準則の改正で運用基準を明確に定め、全国の地方自治体などが災害時に適用しやすい環境を整える。適用対象となる災害規模などの詳細を詰め、中央建設業審議会(中建審)を通じた策定・勧告を目指す。

復興JV制度は被災地の地元建設企業が地域外の建設企業と共同し施工力を確保する目的で、東日本大震災の被災3県(岩手、宮城、福島)の復旧・復興工事に限った試行扱いで2012年から運用している。

地元企業が1者以上いれば2~3者でJVを結成可能。通常のJVより技術者要件を緩和する措置などを講じ、突発的な工事需要が発生する被災地の不調・不落対策などに効果を発揮した。被災3県の10発注者で約690件の契約実績がある。

全国的な災害多発を背景に、被災3県以外でも独自に復興JV制度を創設・活用するケースも目立っている。熊本県は16年の熊本地震や17年の九州北部豪雨で活用。18年の西日本豪雨や北海道胆振東部地震で被災した愛媛県と北海道、19年の台風19号に見舞われた長野県も独自の制度運用で復旧・復興対応に当たった。

国交省は15日の中建審総会で、JV準則を改正し▽特定JV▽経常JV▽地域維持型JV-に続く新たな類型に復興JVを加えることを提案。運用基準は試行段階をおおむね踏襲し、東日本大震災クラスだけでなく一定規模以上の災害を対象とする方向とした。早ければ年末ごろに開かれる中建審の次回総会で改正案を示す。併せて公共工事入札契約適正化法(入契法)の適正化指針を変更し関連事項を追記する。

地域外企業の参入を伴う復興JVに慎重な態度を示す自治体や地域建設業団体も一部いる。中建審総会で全国中小建設業協会(全中建)の土志田領司会長は、東日本大震災の被災地で聞いた声として「復興段階になるとメインの仕事が県外業者に流れ、地場業者には割りの良くない仕事が残った」と課題を指摘した。一方、染谷絹代静岡県島田市長は「災害復旧事業を担う市内業者が減り入札不調のケースも増えている」と実情を訴えた上で、緊急時の備えに有効と賛成意見を表明。地元企業への配慮などで慎重な検討を求めた。

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