2010/07/27 技術者は6ヶ月以上の恒常的雇用関係 現場代理人の常駐義務緩和へ/中建審
平成22年7月26日(月)、中央建設業審議会の総会が開催されました。
今回で3回目の開催となり、今まで議論されてきた経営事項審査の審査基準の改正、
建設工事標準請負契約約款の改正について、改正案や決定事項について報告、意見聴取が
行われました。
1.経営事項審査(以下、経審)の審査基準の改正について(意見聴取)
経審について、企業実態をより適正に評価できる仕組みに改善していくことが喫緊の課題と
なっており、虚偽申請防止対策の強化、経審の項目及び基準の改正を行うとし、改正事項(案)の発表、
虚偽申請防止の改善方策の報告がありました。
1-1 経審の改正事項
①完成工事高(X1点)と元請完成工事高(Z2点)の評点テーブルの上方修正
建設投資の減少によりそれぞれの平均点が減少しており、平均点を700点に近似されるように
平成22年度の建設投資額の推計に基づき修正する。
②評価対象とする技術者に必要な雇用期間の明確化
現在、評価対象とする技術者は審査基準日において雇用期間を定めずに雇用されていれば
認定されているが、審査基準日前に6ヶ月以上の恒常的雇用関係があるものに限定する。
また、高年齢者雇用安定法に基づく継続雇用制度の対象者については、雇用期間が限定されていても
評価対象に含める。
③社会性等(W点)での再生企業の評価の見直し
下請企業等の意思に関わらず債権カット等を行いうる法的整理を行った企業を対象に
・再生期間中、経審上の建設業者の信頼性等に対する評価の最大値である60点をW点から一律に
減じて評価
・再生期間終了後、「営業年数」評価はゼロ年からスタート
の減点評価を行う。
改正基準の施行後に再生手続を開始した建設業者から適用。
④社会性等(W点)の評価項目の追加
建設機械の保有状況とISOの取得状況を加点評価する。
建設機械については、建設機械抵当法第二条に規定する建設機械について、保有台数に応じた加点を
行う。すべての機械を対象にするかは再検討する。また、リースについても実質的に保有と同視しうる
一定のリースについては加点対象。
ISOは9000シリーズと14000シリーズを加点する。
1-2 経審の今後の検討課題
下記3つの事項については、今後検討する。
・海外実績の評価対象への追加
・元請が下請を選定する場合の評価に用いる下請経審(仮称)の創設
・W点の審査項目の各発注者ごとの弾力的な利用
1-3 虚偽申請防止対策の強化について
①疑義項目チェックの再構築
各経営状況分析機関にて内容確認と補正指導している基準値の修正と一部指標の入替えを予定。
加えて、重点審査が可能な件数まで二段階の絞り込みを実施し、絞り込んだ申請について、
許可行政庁に直接情報を提供する仕組みを新たに導入し、許可行政庁がY点も含めて重点審査を行い、
真偽の確認を許可していく体制を構築予定。
②完工高と技術職員数値の相関分析の見直し
1技術職員数値当たりの標準完工高を最新のデータに基づいて再計算し、加えて、完工高の
大きい申請について標準的な完工高からの乖離度合いを追加で情報提供できるシステム改正、
新たに完工高に比べて技術職員数値が極端に高い申請について警告の出るシステム改正を予定。
③その他、調査手順書の改訂等
各許可行政庁が経営状況(Y点)も含めて確認を強化するため、調査手順書の内容を改訂予定。
各許可行政庁間での情報共有、活用促進のため、各許可行政庁の取り組み等について取りまとめ、
情報提供予定。
2.建設工事標準請負契約約款の改正について(決定)
建設業の契約・取引の対等化・明確化を図る観点から、建設工事の標準請負契約約款を改訂し
新旧対照表が発表されました。
2-1 約款共通の主な改正事項
・「甲」「乙」の呼称を、「発注者」「受注者」、「元請負人」「下請負人」に見直し。
・公正・中立な第三者の活用について、紛争が生じた後だけでなく、紛争が生じる前の受発注者間の
協議の段階から活用できるように規定を新設。
2-2 公共工事標準請負契約約款の主な改正事項
・工期延長に伴う増加費用の負担について、発注者に帰責事由がある場合には発注者が費用を
負担する旨を規定。
・契約の相手方が暴力団等である場合などにおける解除権の規定を新設。
・現場代理人の常駐義務の緩和。(下請約款も同様)。
第十条 3 発注者は、前項の規定にかかわらず、現場代理人の工事現場における運営、取締り及び 権限の行使に支障がなく、かつ、発注者との連絡体制が確保されると認めた場合には、 現場代理人について工事現場における常駐を要しないこととすることができる。 |
・中間前払金に関する規定の新設。
2-3 民間建設工事標準請負契約約款(甲)の主な改正事項
・大規模工事について工事の出来高に応じた支払を促進するよう、契約書の記述を整備。
・第三者に損害を与えた場合の契約当事者間の負担の明確化、請負代金の変更の規定の整備等。
・法令遵守に関する規定、発注者から受注者への通知等を原則として書面主義とする旨の規定を整備。
(民間約款(乙)も同様)
2-4 民間建設工事標準請負契約約款(乙)の主な改正事項
・消費者である個人発注者の保護の観点から、前払金等が過大とならないよう、工程に応じた代金の
支払割合を注釈に例示。
2-5 建設工事標準下請契約約款の主な改正事項
・下請が実質的に施工する期間を工期として契約書に明記するよう、注釈を新設。
2-6 今後の取組
下記について、事務局において課題等の整理を行った上で検討する。
・今回の改正は、当面改正する必要がある事項のみに限ったもので、更に改正すべき項目があるか
整理する。特に民間建設工事標準請負契約約款については、民間の取引実態等を踏まえつつ、
定期的な見直しを実施。
・下・下間の契約実態を踏まえつつ、下・下間の契約に関する標準的な約款の整備について検討。
3.事業仕分けの結果について
5月21日の事業仕分けにより、
・監理技術者資格者証の交付の廃止
・義務としての監理技術者講習の廃止
が決定され、今後のことを検討中である。ある程度まとまった状態で報告したい。
上記について、事務局より報告があり、それについて多くの委員から積極的に意見が出され、
概ね了承され、最後に審議官より、約款改正については国土交通省の直轄工事から取り入れ、
活用促進に努めたい。経審改正については省令の改正等を早急に進めたいと話がありました。